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菊池という男

The place where Kikuchi came was a rural residence. There was a farmer who finished work in the field, washing the plow and hoe at the well.

菊池がやってきたところは片田舎の民家だった。畑仕事を済ませて、井戸で鋤や鍬を洗っている農夫がいた。

Kikuchi called out, but did not get a reply.

声をかけたが、返事はもらえなかった。
それどころか村人は菊池の姿を見るやいなや家へ入ってしまった。

菊池はとぼとぼと山に続く道を歩いた。
前から大きな斧を肩に担いだ男が現れた。
菊池が池の場所を聞くと男は山の上の方を指差しながら逃げるように離れて行った。

しばらく歩くと道が二手に分かれた。迷わず左の道を行った。水が落ちる音が聞こえ始めた。

明日までにこの国をでなければ不法滞在として1日500ピの罰金が発生する。

菊池は水の音がする方へ急いだ。途中から道がなくなった。辺りも暗くなり、菊池は杖に布を巻きつけ、ハイオクガソリンをかけ火をつけた。火は一気に燃え上がり辺りは明るくなったが、遠くの方は見えづらくなった。

菊池は足に冷たさを感じた。川の辺りに出たのだ。松明をおろし、遠くを見ると川の岸が見えた。そして川の流れがとてつもなく速いことに気がついた。

川には入れないことを悟った。池はこの先の滝の下にあることは間違いなかった。

夜明けまで待つかそれとも危険を冒してこのまま進むか迷った。結果、引き返すことにした。

10年の歳月と全財産を投げ打ってここまで来たが、お腹が空いたので諦めることにした。

菊池は帰途に着こうとした時、何物かに足を掴まれた。松明を照らすと妻の手だった。

菊池は起き上がり、妻の手を解いた。
そしてカーテンを開けた。時計を見ると午後3時だった。テーブルの上の牛乳を飲みながら夢を思い返していた。

果たして夢だったのかと思うほど何もかも鮮明に思い出せた。

そして続きが気になりベットに戻ろうとしたが、腐った牛乳のせいでトイレに駆け込むことになった。トイレを終えて、大のレバーを押した。水がザーッと勢いよく流れ、ドアを開けると暗闇の中に戻っていた。

バランスを崩し川に落ちた菊池は何もすることができず、ただただ大きくなる滝の音を聞いていた。突然体が投げ出され、死を覚悟した。予想より早く池底に落ちた。落ちると言うより、転げた。水は浅く足首ほどだった。よく見ると滝だと思っていたのは沢だった。

沢カニに足を挟まれ、飛び起きた。
菊池は態勢を整えた。いつの間にか辺りはうっすらと朝靄に包まれ幻想的な世界となった。遠くにケーンケーンとキジのなく声が聞こえた。前へ進むと透き通った池が目の前に広がった。

菊池の頬に一筋のなみだの川にが流れ、雫は池に落ちた。

1滴の滴の波紋が広がり、池の向こう岸に届いた。

その先に月桂冠を頭につけ、白いワンピースの裸足の女性が中腰になり、水を汲んでいた。

きっと母親に違いないと叫ぼうとしたが喉を何かに押さえられ、声が出なかった。

息苦しくなり、目を開けると妻の足が首にかかっていた。菊池は夢を見ていたのではないと思った。沢カニにが足を挟んでいた。

痛かったが優しく沢カニを足から離し、タライに水を入れ放した。

時計を見ると午後3時だった。
妻を起こし、菊池は外へ出た。真夏の太陽が照りつけ、アスファルトもどこか柔らかくなっていた。

一軒の店に入った。決して広くはないが、人も少なく静かだった。

ジンジャエールを注文し、流れている音楽に聞き入り、静かに目を閉じた。

女性は菊池に気づき手を振った。
菊池は女性の方へ歩き始めた。だが、距離は縮まることはなかった。女性は菊池に背を向け、茂みに入って行った。女性の姿はなくなった。

菊池はその場に立ち尽くすしかなかった。夜が明けた。引き返す時間が迫っていた。
菊池は荷物の中から手紙を取り出し、水面に浮かべた。手紙がゆっくりと向こう岸へと流れていくのを見届けると菊池は来た道を引き返した。

途中で雨に変わった。
すべてを洗い流すかのように強く降った。山を降りると一人の農夫が道の脇にしゃがみこんでいた。菊池はその農夫を背負って農夫の家に向かった。

今日はもう間に合いそうもなく、そのまま農夫の家に泊めてもらうことになった。

夕食に出たサツマイモは甘くて美味しかった。農夫の妻が着替えを用意してくれた。

雨はやみ、屋根の隙間から星が見えた。
菊池はそのまま寝入った。

目を開けると目の前にジンジャエールが来ていた。時計を見ると午後3時だった。

菊池は一口口にすると、ストローにサツマイモの皮がついていた。

ジンジャエールにサツマイモも悪くないと思い、店を出た。

家に着き、テレビをつけた。妻に夕食を聞かれ、あとでと答えた。

明日の天気予報を見ると、雨だった。
菊池は明日からアクアリブ島を訪れる予定だった。アクアリブ島には100万年前の遺跡があると言われているが、まだ見つかってはいない。今回菊池は国家プロジェクトの依頼を受け、探索することになっていた。

菊池は幼い頃母親から形見として珍しい石をもらい、大事に持ってきた。ある時図書館で古代文明の書物を読んでいるとその石と同じ形をした石のことが記述されていたのを見つけた。

以来10年以上この石のことを調べてきた。結果この石が100万年前に存在したであろうレアノ文明の物だというところまで突き止めた。

わからないのは、なぜ母親がこの石を持っていたのかということだった。

菊池はまだこの石の存在について語ったことはなかった。

眠れないまま朝が来た。菊池は身支度を終えると車で空港へと向かった。

アクアリブ島へは飛行機と船を乗り継いで30時間を要する。

菊地の他2名も助手として同行することになっていた。

菊池は機内で手紙を書いていた。
キャビンアテンダントがワインを持ってきて菊池のテーブルに置いた。菊池は左手でゆっくりと円を描くようにグラスを回し、目を閉じた。

帰ろうと外へ出たが、菊池は帰る場所を思い出せなかった。そればかりか荷物も見当たらなかった。菊池はそのまま居着いた。

ある冬の朝主が菊地にこう言った。
お前はこの島の主だ。あの池へ行くことが
できたのはお前だけだ。お前はこの島を守る使命がある。それができるのはお前をおいて誰もいない。

そう言い終わると菊池を島の洞窟に連れて行った。筏にのり、奥へ進むと陸地に出た。筏をおり、さらに奥へ進むと壁一面紫色の水晶の空間が現れた。
男は奥の方を指差した。
菊池はあまりの美しさに言葉を失った。
光る宝石がいくつも浮いていた。

あれはと男に聞くが、男は私には見えないと答えた。

男には真っ暗な洞窟にしか見えないという。

菊池はタイヤが陸地に接した時の振動で目を開けた。時計を見た。午後3時を指していた。






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