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12月 23, 2018の投稿を表示しています

エキストラ

北川正33歳制作会社勤務、大学卒業後一度は地方銀行に就職したが、ただ安定だけを求める自身の生き方に疑問を持ち、3年前に退社、その後フリーターになり、バイト中心の生活を送った。 今まで仲のよかった友人は結婚したり、出世したりして忙しくなり、昔みたいに会う機会もほとんどなくなり、自身の安易な決断を後悔していた。 そんな矢先ドラマのエキストラの募集を見かけ、応募してみた。ドラマに出演して俳優になれるかもしれないとまた妄想に浸っていた。 出演が決まり、現場に行くとパンダの着ぐるみを渡された。役はパンダの着ぐるみを着てティッシュを配るだけだった。 真夏の炎天下倒れる演者がいる中着ぐるみの北川は耐え抜いた。 撮影も終わり、日当の5000円を受け取り、北川は帰ろうとしていた。その時あごひげを生やした男が北川に近づき、こう言った。 君、なかなか根性あるね。うちに来ない。もちろんスタッフとしてだけど。   断る理由もなかったし、北川は次の日から都内にあるテレビ制作会社で働くこととなった。 そして三年が過ぎようとしていた。三年目にしてようやくADという役をもらい、こき使われていた。 そんなある日今はプロデューサーになったあのあごひげの人から突然北川が以前没にされた企画書を持ってきてこういった。この企画ちょっとやってみようか。 カメラとアシスタントつけるから撮ってきて。 北川にとっては夢のような話だった。自分なりに努力して来たことは無駄じゃなかったことが初めて証明されたのだ。 一般人にサプライズドッキリを仕掛けるという企画だった。  北川はさっそくホームページでドッキリをかけたい人を募り、応募者の中から3人に絞り込んだ。

イベント

油断する人の決まっていう言葉 大丈夫だと思っていた。 てっきり行けると思った。 まさか○○するとは などです。油断はしないことに 越したことはありませんが、 はっきり言ってまったく油断しない ことは不可能に近いです。 12月汗だくになってイベント会場に現れた男がいた。イベントはすでに終わっていた。階登33歳、今年の人事で課長に昇進した階にとって今回のイベントはとても大きな意義を持っていた。 階は三か月前部長に呼び出され、今回のイベントの責任者を命じられた。そしてこのイベントが社の命運を左右すると何度も念を押された。 以降階は寝る間も惜しまずイベントの成功に向けて全力を注いだ。 その階を誰よりも励まし、誰よりも支えていたのが同期の段だった。 入社当初二人は同じ部署に配属された。 はじめまして階登と申します。 はじめまして段下栄と申します。 当時の課長は彼らを階段と呼んでいた。 また彼ら自身も何か縁を感じ良きライバルとして切磋琢磨していた。そんな中今年階だけが課長に任命された。 階君、課長就任、おめでとう。 段、ありがとう。悪いな、俺だけ。 階君何を言っているんだ。君が課長に相応しいと会社が判断したんだ。一番近くで見ていた僕も君なら間違いないと思う。 段にそう言ってもらえてよかった。これからもよろしく頼む。 階君、何を言っているんだ。当たり前じゃないか。それに覚えてるか、入社して間もない頃二人で飲み明かした時のこと。 段、もちろん覚えてるよ。段がキャバクラの階段にゲロを吐いたことだろう? 階君、その話はもういい。そうじゃなくて、君が登僕が下る。そして二人は栄えるだろう? 段、そうだったな。二人で栄えるんだったな。大丈夫、俺が部長になってお前を真っ先に課長にしてやるよ。 階君、君ならやれるよ。 段、任せとけ! イベントの専属プロジェクトの立ち上げの際階は段を補佐役のサブとして任命した。 階は決断力に長けていたが緻密さに欠けていた。そこを上手く補い、全体の調整をとっていたのが段だった。プロジェクトのメンバーは自然と段の飾らないおごらない態度に心から尊敬の念を抱くようになっていった。大雑把な階は経費などのお金や時間に関してもルーズだった。 階課長、そのお金はプロジェクトの運営準備金ですよ。キャバクラには使えません。段、俺は課長だぞ。接待費だ。こんなに身を焦がして会社のために

何でも屋アプリ

何でも屋アプリ 『人殺しと浮気相手以外何でもOK』と書いてあった。下にQRコード。 三宅はスマホを取り出し、かざした。自動で何でも屋アプリがインストールされた。開くを押すとユーザー登録画面になった。三宅優、男、1984年2月29日そして

真夏の夜に吹く風は爽やか?

真夏の夜に吹く風は爽やか? 指先でジュリアの口元のホクロにそっと触れた。大きさといい、色加減といい、申し分なかった。  おはようございます。先ほどクライアントから電話が入って午後の会議をキャンセルしたいとのことです。 クルル: あっそう。じゃ、ちょっと出かけてくる。 昼までには戻れると思うから。  クルルは防弾チョッキを着込み、自動小銃を肩から下げて颯爽と出て行った。  義実と南雲はビラのポスティングを終えて戻ってきた。 受付:おかえりなさい。義美さんに荷物が届いています。  南雲:うん、伝えておく。 義美: 私に荷物?なんだろう? 南雲:義実さん、出かけるの?それ、  粉ミルク? 非常事態発生ね 義美: ターミンに行かなきゃ 南雲: 一人で? 義美:今日中には戻ってくるからって村長に伝えといて?  義美は粉ミルクをリュックに入れ、出ていった。入れ違いにゴーゴーが入ってきた。  ゴーゴー:今日の予定は? 受付:はい、少々お待ちください。夕方の映画鑑賞のみですね。  ゴーゴー:サヤはもう来てるのか? 受付:いえ、先程メールで定期券を買ってから行くので遅れるそうです。  その時刑事が入ってきた。 刑事:今日は逃げられないぞ。  ゴーゴーは受付にある赤いボタンを押した。鉄の扉が降りてきた。刑事は歯止めを食ったそのすきにゴーゴーは受付の窓から外へ出ていった。  クルルはデパートが開くのを待っていた。 そこへトムがやってきた。 トム:クルル、その格好はマジマズイんとちゃうカンピ。着替えるカンピ デパートが開いた。中からフェルト帽をかぶった女性が出てきた。 ようこそあんビリビリデパートへどうぞおはいりくだだい クルルとトムは女性のあとについて行った。従業員用のエレベーターに乗り 72階で降りた。 トム、いくら持ってる? 67ポンチカンピ 1ポンチ貸してくれ。バグに電話してくる 義実が着替えをしているとそとからヤスジの声が聞こえた。 お前か、久しぶりだなあ。 ああ、みんな元気にしてるよ。 メランバータルはどうだ? どうやら電話らしい。 いるいる。今かわるから。 義実、クルルからだ。 どうした?何でそこにいるんだ? え?マジか?わかった。今行く。 お前も来てくれ。 ママでちゅよ。南雲は

動詞 使役

飲 み ます→飲 ま せます(使役形) 私は飲みます→私は飲ませます 食べます→食べさせます

磯崎

世の中には奇妙なことが山ほどある。 しかし、噂として語り継がれているのはほぼ一部でしかない。 それは我々の理屈を超えたものに対する畏敬の念もしくは語ることによる不利益のようないわば災いが起こると信じられたからであろう。 今から50年ほど前に起こった事件も本来なら誰にも知られずに済むはずであった。 磯崎という男が現れなければ。 昔このあたりに火の孔村と呼ばれる小さな村があった。それはそこに住んでいた人が言っていただけで地図にも載っていない村だった。  時男は畑の草むしりを終えて木の下で茶を飲んでいた。夏真っ盛りでこの地方にしかいないと言われている将軍蝉がじーじーじーと鳴いていた。時男は空になった茶碗蒸にお茶を注ごうとしたその時時男の額にポタっと何かが当たった。持っていた茶碗を置いて指でそのぬめりを触った瞬間体の芯の部分に寒気とも違う何かに恨みを買ったような気分を覚えた。指先を見ると赤茶色の泥っとしたものだった。上を見上げると。 磯崎は放課後小学校の教室で佐代子という女性からの手紙で五十年前に起こったことを知った。 初めてお手紙します。今から二十年ほど前に鳥羽村の駅で貴方様に助けて頂いた者です。 磯崎は教員になる前各地を放浪していたことがあった。 この鳥羽村もその一つであった。ローカル線を乗り継ぎ、無人駅があればそこで降り、

有村

有村:おはようございます。 佐伯:おはよう。今日はずいぶん元気そうだね。 佐伯義一、50歳。タカノシステムの専務取締役。 有村麻衣子、24歳。佐伯の秘書を務めている。 有村:ありがとうございます。     専務、本日のスケジュールを確認させていただきます。 佐伯:あ、その前にコーヒー、一杯飲ませてくれないか。家の機械が調子悪くてね。 有村:はい、承知いたしました。 佐伯はテーブルに置かれた新聞に目をやった。一面に黒崎電気の吸収合併の記事が 出ていた。 有村:専務、上杉社長がお呼びです。 佐伯は軽くうなずき、出て行った。

ムササビ

人工知能の競争が本格的に始まった。  行き着くところは完全な個人管理と監視。 自由を求め逆に自由に縛られる。 無限を求め、得られるのは有限。  スピードを追求するあまり肝心を見落とす。   ただそれでも気づく時が来る。 正確に言えば気づかざるを得なくなる。 フィンテック ビッグデータ 安いポイントと引き換えに高い個人情報が狙われている。 囲い込みがビジネスの原則  恋人 男: そろそろ結婚しようか。 女 そうね。いいわね。 男 僕は式はハワイがいいな。 女 私はイタリアにするわ。 男 イタリア?めちゃめちゃ遠いな。 女 ハワイだって近くないじゃない。 男 だったら写真だけ送って 女 わかった。LINEでいい? 男 いいよ。そしたらハワイの結婚式のも送るから。 女 お幸せに! 男 君も ムササビ

引きずらない

引きずらない  女 昨日はお疲れ様でした。  男 ああ、ありがとうございます。 女 今日は外回りでしょ? 男 そうでしたね。 女 いつもの元気がありませんね。どうしたんですか。 男 いいえ、別に。 女 あ、昨日の試合ですか。 男 ···· 女 あれは仕方ないですよ。 男 私が冷静に対応していればもっといい結果でした。 女 でも、もう過ぎたことです。いつまでも引きずるのは  賢明ではありません。  男 確かにそうですね。 女 昨日は昨日、今日は今日ですよ。 男 まったくその通りですね。じゃ、元気を出して外回りに  行ってきます。 女 いってらっしゃい。

星梅

星梅入社 平成元年星梅は小さな食品卸会社に入社した。 採用の理由は名前が干し梅で当時会社の新製品と被ったことだった。  新商品バカ売れ 社長は急遽商標を星梅に変えた。 すると星梅はバカ売れした。 入社一年目にも関わらず新商品開発サブチーフに抜擢された。 役職手当もついて満足していた。  薬物混入 商品に異物が混入しているとされ製造中止に追い込まれ、会社は倒産の危機を迎えた リストラ 多くの社員が人員整理で辞めていった。ただ星梅だけは残ることになった。 再出発 社には社長を含む5人が残ることになった。その中に星梅の名前もあった。 社長が倒れる 会社の危機