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エキストラ

北川正33歳制作会社勤務、大学卒業後一度は地方銀行に就職したが、ただ安定だけを求める自身の生き方に疑問を持ち、3年前に退社、その後フリーターになり、バイト中心の生活を送った。

今まで仲のよかった友人は結婚したり、出世したりして忙しくなり、昔みたいに会う機会もほとんどなくなり、自身の安易な決断を後悔していた。

そんな矢先ドラマのエキストラの募集を見かけ、応募してみた。ドラマに出演して俳優になれるかもしれないとまた妄想に浸っていた。

出演が決まり、現場に行くとパンダの着ぐるみを渡された。役はパンダの着ぐるみを着てティッシュを配るだけだった。

真夏の炎天下倒れる演者がいる中着ぐるみの北川は耐え抜いた。

撮影も終わり、日当の5000円を受け取り、北川は帰ろうとしていた。その時あごひげを生やした男が北川に近づき、こう言った。

君、なかなか根性あるね。うちに来ない。もちろんスタッフとしてだけど。  

断る理由もなかったし、北川は次の日から都内にあるテレビ制作会社で働くこととなった。

そして三年が過ぎようとしていた。三年目にしてようやくADという役をもらい、こき使われていた。

そんなある日今はプロデューサーになったあのあごひげの人から突然北川が以前没にされた企画書を持ってきてこういった。この企画ちょっとやってみようか。

カメラとアシスタントつけるから撮ってきて。

北川にとっては夢のような話だった。自分なりに努力して来たことは無駄じゃなかったことが初めて証明されたのだ。

一般人にサプライズドッキリを仕掛けるという企画だった。

 北川はさっそくホームページでドッキリをかけたい人を募り、応募者の中から3人に絞り込んだ。


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