油断する人の決まっていう言葉
大丈夫だと思っていた。
てっきり行けると思った。
まさか○○するとは
などです。油断はしないことに
越したことはありませんが、
はっきり言ってまったく油断しない
ことは不可能に近いです。
12月汗だくになってイベント会場に現れた男がいた。イベントはすでに終わっていた。階登33歳、今年の人事で課長に昇進した階にとって今回のイベントはとても大きな意義を持っていた。
階は三か月前部長に呼び出され、今回のイベントの責任者を命じられた。そしてこのイベントが社の命運を左右すると何度も念を押された。
以降階は寝る間も惜しまずイベントの成功に向けて全力を注いだ。
その階を誰よりも励まし、誰よりも支えていたのが同期の段だった。
入社当初二人は同じ部署に配属された。
はじめまして階登と申します。
はじめまして段下栄と申します。
当時の課長は彼らを階段と呼んでいた。
また彼ら自身も何か縁を感じ良きライバルとして切磋琢磨していた。そんな中今年階だけが課長に任命された。
階君、課長就任、おめでとう。
段、ありがとう。悪いな、俺だけ。
階君何を言っているんだ。君が課長に相応しいと会社が判断したんだ。一番近くで見ていた僕も君なら間違いないと思う。
段にそう言ってもらえてよかった。これからもよろしく頼む。
階君、何を言っているんだ。当たり前じゃないか。それに覚えてるか、入社して間もない頃二人で飲み明かした時のこと。
段、もちろん覚えてるよ。段がキャバクラの階段にゲロを吐いたことだろう?
階君、その話はもういい。そうじゃなくて、君が登僕が下る。そして二人は栄えるだろう?
段、そうだったな。二人で栄えるんだったな。大丈夫、俺が部長になってお前を真っ先に課長にしてやるよ。
階君、君ならやれるよ。
段、任せとけ!
イベントの専属プロジェクトの立ち上げの際階は段を補佐役のサブとして任命した。
階は決断力に長けていたが緻密さに欠けていた。そこを上手く補い、全体の調整をとっていたのが段だった。プロジェクトのメンバーは自然と段の飾らないおごらない態度に心から尊敬の念を抱くようになっていった。大雑把な階は経費などのお金や時間に関してもルーズだった。
階課長、そのお金はプロジェクトの運営準備金ですよ。キャバクラには使えません。段、俺は課長だぞ。接待費だ。こんなに身を焦がして会社のために働いてるんだ。
階課長、それを言うんだったら身を粉にしてです。ともかくここは割り勘でいきましょう。
段、うるさい。何だ、御前は。いつも規則だの、ルールだの、いちいち細かいことを気にして。だから出世できないんだ。
階はこの時お酒に酔い、隣のキャバ嬢にもたれかかりながらも段対して心にもないことを勢いで言ってしまったと一瞬思った。
段もまたそれを真に受けまいと思うはずだった。
いよいよイベントが始まった。
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