世の中には奇妙なことが山ほどある。
しかし、噂として語り継がれているのはほぼ一部でしかない。
それは我々の理屈を超えたものに対する畏敬の念もしくは語ることによる不利益のようないわば災いが起こると信じられたからであろう。
今から50年ほど前に起こった事件も本来なら誰にも知られずに済むはずであった。
磯崎という男が現れなければ。
昔このあたりに火の孔村と呼ばれる小さな村があった。それはそこに住んでいた人が言っていただけで地図にも載っていない村だった。
時男は畑の草むしりを終えて木の下で茶を飲んでいた。夏真っ盛りでこの地方にしかいないと言われている将軍蝉がじーじーじーと鳴いていた。時男は空になった茶碗蒸にお茶を注ごうとしたその時時男の額にポタっと何かが当たった。持っていた茶碗を置いて指でそのぬめりを触った瞬間体の芯の部分に寒気とも違う何かに恨みを買ったような気分を覚えた。指先を見ると赤茶色の泥っとしたものだった。上を見上げると。
磯崎は放課後小学校の教室で佐代子という女性からの手紙で五十年前に起こったことを知った。 初めてお手紙します。今から二十年ほど前に鳥羽村の駅で貴方様に助けて頂いた者です。 磯崎は教員になる前各地を放浪していたことがあった。
この鳥羽村もその一つであった。ローカル線を乗り継ぎ、無人駅があればそこで降り、
しかし、噂として語り継がれているのはほぼ一部でしかない。
それは我々の理屈を超えたものに対する畏敬の念もしくは語ることによる不利益のようないわば災いが起こると信じられたからであろう。
今から50年ほど前に起こった事件も本来なら誰にも知られずに済むはずであった。
磯崎という男が現れなければ。
昔このあたりに火の孔村と呼ばれる小さな村があった。それはそこに住んでいた人が言っていただけで地図にも載っていない村だった。
時男は畑の草むしりを終えて木の下で茶を飲んでいた。夏真っ盛りでこの地方にしかいないと言われている将軍蝉がじーじーじーと鳴いていた。時男は空になった茶碗蒸にお茶を注ごうとしたその時時男の額にポタっと何かが当たった。持っていた茶碗を置いて指でそのぬめりを触った瞬間体の芯の部分に寒気とも違う何かに恨みを買ったような気分を覚えた。指先を見ると赤茶色の泥っとしたものだった。上を見上げると。
磯崎は放課後小学校の教室で佐代子という女性からの手紙で五十年前に起こったことを知った。 初めてお手紙します。今から二十年ほど前に鳥羽村の駅で貴方様に助けて頂いた者です。 磯崎は教員になる前各地を放浪していたことがあった。
この鳥羽村もその一つであった。ローカル線を乗り継ぎ、無人駅があればそこで降り、
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