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ユリージア

極寒の地にあるこの小さな国には100万人の人が暮らしている。

この国に入るには特殊な審査を通らなくてはならない。そして、一度でも国を出れば二度と入ることはできない。

あらゆる災害はこの国では起きない。水も食料もすべて自国で賄っている。楽園のようなこの国を侵略しようと試みるもすべて失敗に終わっている。

過去に核爆弾を投下されたが、何ら影響はなかった。台風も地震も全く起こらない。

そんな理想郷である国への入国を希望する人々はあとをたたない。ただ誰でも入ることはできない。年に一度行われる入国審査に通らなければならない。その審査基準は公表されていないが、特に富裕層や知識人というわけでもない。過去に犯罪を犯した人も入国できている。一旦入国できても犯罪を犯すと国外追放され、二度と入ることは許されない。

幼子を背負ったリュウゾウはこの国の入国ゲートの手前にある入国審査事務所にやっとたどり着いた。ここまで来るのに三十三年の歳月を費やした。

受付で入国申請用紙を受け取った。その場で子供に名前を付け用紙に丁寧に名前を書き、リュウゾウはうつ伏せてしまった。受付終了時間になり審査官はリュウゾウのところへきて脈を確かめた。すでに死んでおり、硬直が始まっていた。

子供を下ろすと審査官は子供を抱きかかえ、申請書を持ち奥の部屋に消えた。

今から40年前リュウゾウはラガバンケット国の王子となった。突如飢饉が訪れ餓死していく民、疫病で倒れる民を見てリュウゾウは国を後にした。城の食糧も底をついた。干ばつ更には地震、火山噴火このままでは国が滅んでしまう。何とかしなくては。北にユリージアという理想郷があると聞いたことがある。民を連れて旅立った。地図もなく進んでいった。小さな村に入った。僅かな食糧をわけてもらい餓えを凌いだ。その村にミーシーアという女性がいた。赤ん坊を抱えこちらを見ている。聞いてみると夫も理想郷を目指しすでに1年何の知らせもなく、私も行きたいのだが病にかかりもうすぐしんでしまう。このこだけでも連れて行ってもらいたいと頼まれ連れて行くことにした。この村では生まれてきた子供に名前をつけると育たない。3つになるまで名前をつけて呼んでははいけないらしい。
次の村についた。左目を差し出して行き先を聞いた。
最後の橋は一人しか渡ることができない。谷に飛び込んだ。

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