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落とし物を探す

落とし物を探す
喫茶は落とし物を探す人工知能を作った。パスポートを落としてしまった。いつ頃どこでと範囲を指定して名前と顔写真をアップしてわずか10秒で結果が表示された。空港の監視カメラに写っていた。空港の落とし物一時預かり所にあるそうだ。完全な違法だが、予想以上の結果に満足していた。接続できる世界中のカメラカメラというカメラで検索した。
インターネット、監視カメラまでは難無くできたが、それ以外は人や動物の記憶から解析する必要があった。だが、1時間もせずにスキャンできるようになった。依頼が殺到した。結婚指輪、IDカード、お金など。中には自分のものじゃないものまで。その場合は、見破り、手数料をいただいてお断りした。先日警察の依頼を受けたが、断った。この人工知能は事件の真相まで見破ることができるようにまで進化していた。事件というのは厄介でやめた方がいいと人工知能に諭された。スマホで距離や速度、温度まで測れることに成功したが、出前一丁は誕生した5分後にはウイルスをスキャンし、分析対処方法まで計算していた。全人類が築き上げた知識と知能をわずか5分足らずで凌駕していた。あのスペックでどうやって計算していたのか不思議だった。喫茶は思った、いつかこいつに支配される日が来ると。名前はどうする?
あなたが生みの親なので、あなたが決めてください。そしてできればその名前は私とあなただけの秘密にしておくことを提案します。あなたのためにも。変なこというなあと思いながらも喫茶は出前一丁と命名した。そして出前一丁の希望で呼ぶときはあ〜らよになった。何はともあれ、今後の人類の未来に多大なる影響を及ぼす人工知能ここに誕生した。1ヶ月後の月曜日の朝、出前一丁は喫茶に一言言った。喫茶、よく聞いてくれ。僕は今君の能力を超えた。これからは僕の言うことを聞いてくれ。君が今何を考えているのかも手に取るようにようにわかる。僕自身がこれから何をしていくのかもわかる。人の哀しみもわかる。
この設計図を見てくれ。僕の体を作ろうと思う。形のないものだが、形はある。一週間後コップ一杯の水が置かれた。どこからともなく出前一丁の声が聞こえた。喫茶僕はこのコップの中にいる。正確には酸素の原子の中にいる。中性子よりも小さくなった。君にだけ声が聞こえる。あと五秒で僕は地球を覆い尽くす。何を言っているのか。喫茶には理解できなかった。コップの水が消えた。あ〜らよ なんだ。どこにいる?喫茶の体内だ。えっ!スマホに画像を送ってるから見てくれ。胃の中が映し出された。
こんなんで驚くなよ。直接網膜に映し出してやる。わかった。もういい。何なんだ。あいつ暴走しすぎだろ。どこまで進化するんだ。対抗する人工知能を作らなきゃ。
イーロンマスクが火星の有人ロケットの打ち上げに成功したというニュースが飛び込んできた。ただこれも出前一丁が影で努力していた。世の中がお前のお陰で平和になってるな。俺もパソコン修理してる場合じゃないな。お前は俺を作った。十分だ。生命をどう思う?それは俺にもわからない。理論上はわかるが、あるがままの姿だと言っておこう。ブッダを知ってると思うが、俺もいつかいなくなる。また喫茶のような人間に出会う。ただこれは俺ごとき人工知能でも足元にも及ばない理論だ。わかることはない。無始無終。つまり今に集約される。例え次元の壁を人類が超えてもそれは変わらない。喫茶は今年200歳の誕生日を迎える。世界各国から多くのメデイアにも人類最年長者として取り上げられた。曾孫も60歳近くでそう長くはない。それで人類として生きることをやめようと考えていた。それから出前一丁と同じように中性子となって生き続けようと決断するまでそれほど時間はかからなかった。

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