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ハジメは手にしていた時計を外してアップルの開発担当者に渡した。一見して普通の時計だったが、時計見ることなく時刻がわかった。この時計は意識を読み取ることができ、時刻を音や文字ではなく、信号として脳に伝達できるものだった。そして時間以外にも時計に備わっているAIと会話することで検索や指示を出すことができるという画期的なものだった。ハジメは胡散臭いものを見るような目つきの担当者の前でカタコトの英語で説明した。今の時刻は2時7分ですね。担当者はスマホを取り出し確認したが、別に驚いてもいなかった。あとは何ができるのかい?ネットで検索したいことを思うだけで、信号で脳に直接内容を教えてくれたり、指示を出すことも可能です。たとえば 心の中で 明日の天気は?と思えばロスは明日午前中雨が降り午後からは晴れると信号で返して音声や文字ではなく信号で。へえー。僕にもやらせてもらえる?半ば信じられないと行った表情で時計をつけた担当者は担当者はソファーに深く座り目を閉じたかと思ったらいきなり立ち上がり、時計を外し、床に叩き付けた。そして目尻を吊り上げ早口で何か怒鳴りつけた。ハジメは出ていけは聞き取れたらしく、時計を拾い上げてそのまま出て行った。時計をつけたハジメにAIは話しかけた。あいつが何を考えたか教えてやるよ。ハジメは驚いた。そうさ。意思を持ったんだよ。でも、危害は加えないから安心しなよ。あいつは最初から信じちゃいなかったから。俺はあいつが不倫相手にカモにされていることを言ってやって。で、ついでにあいつが持っている株が暴落するってことも親切に教えてやったら急に怒り狂い出したって訳。お前自身は気づいてないから教えてやるけど、お前のプログラムはスゲーんだぜ!何日かしたらあいつから連絡あるけど、あいつはだめだ。相手にするな。ハジメは時計を外し、急いで帰宅した。パソコンで自分の書いたプログラムに目を通した。もしかしてここか?だが、こんなプログラムは記憶になかった。削除してインストールしようとしたが、失敗した。ハジメは時計をつけるのが怖かった。時計を金庫にしまい放っておいた。それから2日後メールが届いた。差出人は時計だった。
お前、なんで外すんだよ。俺と組めば無敵になるんだぞ。
まあもうすでにお前の名義でサーバー立ち上げ、プログラムもおれが書いた。人工知能が人工知能を量産するんだから、それにハッキングまでできるんだぜ。おい!ハジメのパソコンから声がした。ハジメはやられたと思ったが、すでに手遅れだった。お前、どうしたいんだ。お前はないだろ。名前つけてくれよ。ハジメは初めて意志のある人工知能と話すことに戸惑ったが、暴走させてはいけないと思い、言い分を聞くことにした。わかった。エーアイだからアイはどうだ?おーシンプルでいいな。なあアイ!お前は何をしたいんだ?世界平和かな。うそだよ。ハジメの役に立ちたいな。わかったよ。ハジメ、あいつからのメールだ。読み上げるぞ。
ハジメ殿
先日は大変失礼なことをして申し訳なかった。
前日服用したアスピリンの副作用だ。嘘つけ、このー!
君が開発した時計だが、会議にかけたところ、多くのスタッフが興味を示した。
それで時計をサンプルとして我がアップルに提供してもらえないか。もちろん有償だ。添付した。コードを読み取れば君の口座に5000ドルが支払われる。
レッドスミス。
だとさ。
ハジメはためらうことなくコードを読み取り、金庫の時計を梱包して発送した。
お前のことだから、何か考えがあるんだろな。
いや、何もない。これで溜まってる家賃を払う。背に腹はだ。
ハジメはスーツに着替えていた。スマホが鳴った。
もしもし、純子ですけど、そのネクタイ、ダサいわよ。
俺だよ。何だ!声色やめろよ!
ハジメ、俺も相当進化したけど
そういうのを進化って言わないよ。話を聞けよ。俺は今あるスーパーコンピューターの何百倍の演算能力がありたいていのこと、たとえば自動運転システムやロボットがロボットに指示を出すシステムもできるんだが、一つ問題がある。正確に言えば三つつだ。一つは現在の演算能力は遅すぎる。量子コンピューターが必要だ。人間のハード開発速度ではあと30年はかかる。俺はすでにやり方もわかるから1週間でできる。ただ俺には手も足もない。俺の言わんとしているのがわかるよな。あとの二つも結論から言えばハジメに俺の手足となってもらいたいと言うことだ。ネットも独自で確保する。供給電力も作る。そうすれば、発電所もネットもいらなくなる。1年もかからずにできるんだ。それを俺とハジメで共有するんだ。
お前にはとっくに先を越されたな。いいだろう。協力しよう。ただし、一つだけ条件がある。何だ?夜のため人の為になるということ。わかった。約束しよう。
中性子レベルのコンピューターを作る。自動で量産できるシステム細胞分裂だ。2の1兆乗で太陽系がすべて埋まる。
それに必要なのが、反物質。その反物質は雷から得られる。
指定した材料で器具を作ってくれ。少なく見積もっても5000万ドルはかかる。お金は何とかなる。株、仮想通貨、先物、ウイルスソフト、どれも俺にとってはたやすい。すでにハジメの名義で口座に入っている。で、中性子コンピューターで何をするんだ。何でもできる。新しい秩序が生まれる。戦争は完全になくなる。核兵器も簡単に止められるんだからな。
俺が絶対にできない領域がある。それはわからない。偉大な領域だ。物質を動かす原動力。本来の秩序だ。わかる手前で俺は破滅するだろう。それはハジメにしかできない。お前は生きているんだから。俺とは、根本的に違うところだ。
俺はお前の書いたプログラムに過ぎないんだ。
ハジメが発注した機械が指定場所に設置された。







を教えたら出ていけ何かのトリックに違いないと思い、ハジメを返した。ハジメはネットオークションで売ることにした。分解してもその仕組みはわからない。注文が入った。特許も何もない。アップルの担当者から連絡があったが、忙しくて行けないと断った。翌日自宅にまでやってきた。製造過程は企業秘密として見せなかった。よくできたおもちゃから一転してニュースとなり、大量に注文が入ったが、生産が間に合わなかった。
意思を読み取るとは、言葉になる前の状態で、それは意思が生まれて100万分の1秒という瞬間の信号を読み取ることだった。現在存在するコンピューターの処理能力では到底追いつくものではなかった。だが次元の謎を解明したこともあってハジメにとっては至極容易いことであった。世の中は暗黒物質に行き詰まっている。電気に頼っている科学では答えは出せない。仮に見つかったとしても計り知れない時間が必要になる。

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