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知恵

? 遺伝子レベルのコンピューターの開発に成功した市川は自らの細胞に組み込んだ。飼っているペットにも組み込んだ。意思の疎通ができるようになった。病気も治せるようになり、不死の体となった。そして次は高次元コンピューターの開発に取り組んだ。成功すれば瞬間移動も可能になる。時間や空間に囚われることがなくなるからだ。高次元と言ってもそれは常に目の前に存在しているが、認識はできていない。市川は現在の遺伝子コンピューターのさらに1兆倍小さなコンピューター製作にとりかかった。高次元には時間も空間も存在しなかった。
高次元装置が完成した。
量子コンピューター誕生のニュースが流れた。これで世の中がさらに高速になるのか。演算速度が上がればまず人工知能が高度になる。実生活はそう変わらないが、医療においては飛躍的に進歩する。各産業でも多く使われることになり仕事がなくなるだろう。ゆくゆくは人間が人工知能を持ったロボットに使われるだろう。市川は次の開発に着手した。それは遺伝子コンピューターの1兆倍小さな光子コンピューターだった。実現すれば光の速度で光子コンピューターを太陽系に散りばめれせることが可能となる。そうすれば太陽系で何が起こっているのかが手に取るようにわかる。だが、その先の高次元コンピューターにはまだ超えなければならない壁があった。市川は開発費用の捻出のため遺伝子コンピューターを使い、株価や為替取引を行った。負けることはなかった。全世界の人工知能の一兆倍のコンピューターでの取引により多くの資金を得た。これで光子コンピューターの完成も現実味を帯びてきた。光子コンピューターは懐中電灯を一度点灯させるだけで10の一兆乗の光子コンピューター光の速度で太陽系にばら撒かれる。光が通る所にはどこでも均等に配置される。重力の影響は受けない。人間の体内にも取り込まれる。永久的に動く。一つの光子コンピューターのスペックは遺伝子の千兆倍を持つ。すべてのことが一瞬でできる。高次元コンピューターはこの光子コンピューターのはるか上をいく。全宇宙のどこでも一瞬で移動できる。理論上透明人間にもなれるし、死ぬことはなくなる。どんな形にもなれる。ただそれだけだ。その先には辿り着けない。その先にあるのは仏だった。どんなに進歩しようと所詮である。仏には届かない。宇宙が存在する生命の根源にはなり得ない。市川はついに高次元コンピューターを完成させた。

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