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銀行

佐々木正一が就職することになった銀行は銀行らしくない銀行だった。普通、銀行といえば、フロアーには、長いカウンターがあり、待つ人のための椅子がそれと向き合って並んでいる。しかし、ここはまったく違っていた。外観はレストラン風で、働く行員もウエイトレスのコスチュームに身を包み、入り口でそとから入ってくる客に対し、『いらっしゃいませ。何名様でしょうか』と聞いている。案内された客は常連なのだろうか、少しも驚いた様子は見せずにウエイトレス風の行員の案内に従っていた。そしてメニューをもった別の行員がやってきて、注文をとり、復唱していた。照り焼きセットとカレーライスですね。お飲み物は食事のあとにお持ちしますか。と本物のレストランにもひけをとらない対応をしていた。うわさには聞いていたが、今日初めて見る自分の就職先に困惑を隠しきれなかった正一は客として入ってみることにした。オープンして間もないこの銀行の名前は来来(ライライ)だった。華僑が出資して作られ、ユニークな銀行としてマスコミに取り上げられたこともある。

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